Web活用備忘録
集客単価・顧客獲得単価を考える
2008 年 6 月 28 日
こんにちは。今スグ試せるWeb活用研究会の石川です。
「予算はまったく無いのだけど、ホームページを作ってほしい」。
こういった相談が、ごくたまにあります。最近は少なくなりましたけどね。最近のWeb担当者は優秀です。Webサイトは企業活動の要のひとつとなっているので、無能な者を配属できなくなりました。
企業Webサイトへの投資を考えるにあたり、ケーススタディのひとつとして以下の思考遊びをしてみました。できるだけシンプルなモデルを用意します。アイタスが実際にWeb施策をプランニングするときには、もっと別な要素も含めて考えますので、以下は頭の体操程度に捉えてください。
■相談企業
実店舗を4店展開している高級輸入雑貨販売店
主な宣伝広告手法:月刊『すてきな雑貨百貨』へ4色2P毎月出稿 40万円
100円1000円のグッズではなく、数万円〜数十万、なかには数百万の家具を扱っており、商売のポイントは集客にあるとします。
現在、月刊専門誌へカラー見開き広告を毎月出稿しており、広告費は40万円。本が出ると、月平均8名、週に2名程度の「雑誌見て〜」という来店者があります。
というわけで、集客単価は40万円 ÷ 8名 = 5万円/人 となります。
※話が複雑になっていくので本稿ではこれで留めます。詳しくは顧客獲得単価・CPO(Cost Per Order)・CPR(Cost Per Response)などで検索をしてください。
月に8名の来店者をさらに増やしたいということで、自社ホームページを開設します。目的はズバリ、来店者増。
現況施策の実績が5万円/人なので、これを基準に物事を考えます。
月8名の来店者をどれだけ増やすのか?
→月12名にしたい。つまり、4名増・1.5倍が数値目標。
現況集客単価実績から算出すると
5万円/人 × 4名 = 20万円 となります。
Webサイトに投資しておかしくないカネは月額20万円と考えます。
※繰り返しとなりますがこれは頭の体操だからね。自社ホームページを考えるきっかけにしていただけると嬉しいです。
「予算無いのだけど、なにかしたい」「安けりゃ安いほどいいよ」より「現況の宣伝広告費のコストパフォーマンスを踏まえて、それを基準にどれだけWebサイトに投資すべきか試算してみよう」のほうが、前向き・建設的・具体的っぽい気がしませんか。
月額20万円を年間予算に変えて、Webサイトの年間予算を240万円とします。
このWebサイトの数値達成目標は
「ホームページを見ました」という来店者を年間48名獲得することです。
年間48名の来店者を確保できるWebサイト企画を予算240万円で実施する。
キリの良いところで年間50名を達成したら、担当者を表彰してあげましょう。
これが、ホームページづくりの基本的な考えかたとなります。
年間480名であれば、予算は2400万円です。
年間5名であれば、予算は25万円です。
まぁ、年間5名であれば人が動くだけハラが減るので、やらないほうがいいですよね。つまり、20万〜30万程度の企業サイトであれば、無くて良いのです。
「予算無いのですが〜」「安くやってくれるところ探してます〜」「見積出せやオラオラ」という相談者に限って、上記のような前提条件が明確になっていないので
○他社でユニークな企画やっているので、それに負けないおもしろいことをやりたい
○オレ様が気に入るデザインをひとつよろしく。気に入るまで何度でも修正してもらうよ。当然でしょこっちは客なんだから
○Web2.0でお願いします
○あれもやりたいこれもぜひそういえばそれも大切です
と、目的につながらない部分で迷走してしまいます。
獲得目標へ向かう視点が定まっていないので、相見積とデザインサンプル(デザインサンプルは獲得目標には完全に無関係なので、見るだけムダ)を数社から取り寄せ、内容はわからないので最安値のところへ発注してしまいます。
このような流れで失敗している企業Webサイトがたくさんありますね。
また、制作会社側も「依頼主の獲得目標」など気にしていないケースが散見されます。
そのような制作会社に共通する事項としては
○すぐ見積・デザイン案が出てくる
○依頼主とサイトの目的・獲得目標の共有をするためのディスカッションをおろそかにする
○Flashを勧める(動きのあるコンテンツはよほど賢いプランナー・デザイナーが介在しない限り、大抵の獲得目標にはまったくつながりません。カネのムダ)
○Web標準・CSS・ユーザビリティ・アクセシビリティなどなど、作り手の自己満足系の技術に固執する(これらを最重要視する制作者へ試しに「それやるとウチはなんぼ儲かるの?」と聞いてみましょう)
○Movable Type・WordPress・LAMP・自社開発のモジュールなどなど、プラットフォームの話に終始する
○実際に誰が制作するのかわからない(下請け・孫請けに丸投げするので、制作者を打ち合わせの場に出せない)
○直接会わない(メールや電話で済まそうとする)
といったところがあります。上記事項が複数当てはまるところは要注意。
つまり、Web制作会社自体、自分たちが引き受けた仕事を「依頼主の目的を達成するためのサイトづくり」とは捉えていない場合が少なくないわけです。「客からMTカスタマイズしてくれと依頼されたからそれやってる」といった「作業」の意識しか無い制作者には一円も出してはいけません。
経営者が「ホームページのことはよくわからない」としても、経営上の数字は理解可能です。「ウチの社長はWebに理解が無くて……」とボヤいている担当者は仕事をしていませんね。
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